「黒澤泰&飯田基晴の地域猫活動のすすめ」DVDの購入先について

*ノラ猫の事で悩んでいる方はたくさんいらっしゃると思います。様々な実体験が収録された「地域猫活動のすすめ」からヒントを得ていただけるのではないでしょうか。
DVDは見ごたえのある3部構成になっています。
第1部では地域猫活動とは何かを説明し、第2部では実際に行われた地域猫活動のドキュメンタリー、第3部では失敗談を元にノウハウが語られています。

黒澤 泰の地域猫講演要旨
(DVD「地域猫活動のすすめ」第1部に収録)

~地域猫活動のすすめ~

ノラ猫の問題は明確な対応策が示せないために曖昧なものとなっています。
フンや鳴き声で迷惑している人からすればこの場から居なくなって欲しいと思うし、かわいそうと思う人はこの場で何とか生きていて欲しいと思っています。この正反対の考え方がノラ猫問題を厄介なものにしているのです。
そこで、ノラ猫問題の解決策の一つを提案します。それが地域猫活動です。

1. 原因はどこにあるの?

そもそも飼い主のいない猫いわゆるノラ猫の原因はどこにあるのでしょう。
猫が悪いのでしょうか?いいえ、そんな事はありません。猫を置き去りにし
たり、捨てていく人がいたから飼い主のいない猫が生み出され続けているの
です。
つまり、猫が問題なのではなく、人間に問題があるのです。
ならば、問題を作り出している人間が問題を解決するために手を貸す必要があるのではないでしょうか。

2. 猫は本能のままに

生み出された猫は本能のままに繁殖を続けて、爆発的に増えているのが現
状です。
増えていく背景には、温暖化により外での生活がしやすくなったこと、フードが進化し栄養が摂りやすくなったこと、天敵である犬が放されることなく繋いで飼うなどしっかりと管理されたことによりストレスがなくなり、健康状態が良く、繁殖力も上がり、生存率も向上していったと考えられます。

猫の数が増えれば当然、猫のフン、鳴き声による騒音、子猫が生まれる等のトラブルが発生してきます。

3. 猫の生理・生態を知る

猫のメスは、生後6ヶ月で繁殖が可能であり、交尾の刺激によって排卵するために高確率で妊娠し、1回に3~6匹の子猫を産みます。昔は春と秋が繁殖期と言われていましたが、今では年3回は普通に生んでいます。
オスは、発情のメスの鳴き声や臭いに反応して、オス同士のケンカによる騒音や臭い尿を撒き散らすなどトラブルの原因になります。
このような猫の繁殖によるトラブルをなくすには、不妊去勢手術をすることが一番です。

4. その場所から猫をいなくする手立てはない

ノラ猫にエサを与えなければ猫はいなくなるからエサやりを止めてという人がいますが、一時的にいなくなったようにみえても半径500m以内の自分の生活圏内(テリトリー)で、生きていくためには何でもします。ゴミを漁ったり、池の魚を獲ったり、家の中に入って食べ物を探すこともあり、また新たなトラブルを招くだけのことなのです。

「保健所に連絡して捕獲して処分してもらえ」という人もいますが、保健所では捕獲処分は行いません。犬は狂犬病という恐ろしい病気を蔓延させないために狂犬病予防法、条例などによって行政が捕獲、処分しますが、猫は根拠となる法律がないために行政では捕獲は行いません。

また、動物の愛護および管理に関する法律によって、飼い主のいない猫いわゆるノラ猫も愛護動物とされています。そのため、他の場所に連れて行くとか捨てることは法律により罰せられます。

全てのノラ猫を保護して新しい飼い主を探せれば理想的ですが、1,2匹ならともかく全部の猫を保護、譲渡する事ことは大変な負担であり限界があります。飼育崩壊予備軍が多々見られるのも新たな問題です。

エサやりを止めても、行政に捕獲依頼しても、他の場所に持っていくことも、全部を保護することもできないのです。つまり、今その場所にいるノラ猫を居なくなって欲しいと思っていてもそのような手立てはないのです。

5. 発想の転換

手立てがないならば発想の転換をしましょう。猫はその場所に居るものだと考えて、人と猫が上手に共存しトラブルをなくしていくにはどうしたらよいか。つまり、猫を居なくするのではなく、トラブルをなくすことを目指すのです。
これが「地域猫活動」なのです。

6. 地域猫活動とは

飼い主のいない猫いわゆるノラ猫を、今以上に増えないように不妊去勢手術を実施し、エサの管理、フンの清掃など地域のルールに基づいて適切に飼育管理することで、地域の理解が得られた猫のことを地域猫と呼びます。
ノラ猫にエサだけを与える行為ではありません。不妊去勢手術だけをして元の場所に戻すいわゆるTNRは地域猫活動の途中なのです。

(1)地域猫活動を担う4つの立場の人達

①地域住民
活動の中心となって動くのは住民です。トラブルのない地域にするために、地域のみんなで良く話し合いをしましょう。

②行政
行政の得意分野は広報と調整です。地域での猫トラブルを中立的立場で調整するとともに、正しい地域猫情報を啓発します。

③ノラ猫のために活動するボランティア
経験と知識を活かして地域からの相談に応じて、活動の支援特に地域住民では難儀な不妊去勢手術のための捕獲作業などのアドバイスをしていきます。

④動物病院
絶対条件である不妊去勢手術の施術を担います。

(2)地域猫活動の最低条件

①周辺住民の理解
自分の住む地域がトラブルのない住みやすいところになるために、みんなで話し合い妥協点を見つけて理解を得るようにしましょう。

②不妊去勢手術の徹底
増やさないためには不妊去勢手術は必ず実施します。その時に手術済の目印として、耳先をカットするなど外から見えて誰もが分かるものにします。右がオス、左がメスというルールが徹底できるとさらに明確になります。

③エサの適切な管理
エサは地域の了解を得た上で場所と時間を決めて、猫と対面しながら与えることです。猫を見ながら与えることで、健康状態や侵入猫の状況が把握できます。
食べ終わったら速やかに片付けて置きエサは止めましょう。食べに来ない猫がかわいそうとエサを置いていくことが置きエサとなり、新しい猫やカラス、ハクビシンさらにはゴキブリなどの衛生害虫まで呼び込むことになるので絶対に止めましょう。

④周辺の美化
猫のトラブルで一番多いのがフンの問題です。「ノラ猫はどこでフンをするか分からないので掃除はできない」と言う人がいますが、猫の習性を利用するのです。猫は、柔らかい場所で掘って排泄して埋め戻す習性があるので、柔らかい土や砂で猫用トイレを設置し、その場所で排泄するように仕向けることです。最初はマタタビを利用して猫を寄せてみたり、フンを取り除いて柔らかくしておくことなどに努力をすることです。

7. 地域猫活動を成功させるための秘訣 

出来るだけ多くの人たちに、地域猫活動を知ってもらい理解・協力してもらうことです。ノラ猫は、飼い主がいないのですから責任の所在が明確ではありません。だからこそ個人の問題ではなく、地域の問題として解決する必要があるのです。
地域猫活動は、自分の住んでいる地域のノラ猫によるトラブルをなくして住みやすい町にするための活動なのです。決して猫愛護、動物のためだけの活動ではありません。だから、猫を好きな人も、嫌いな人も、関心のない人も地域の環境問題としてみんなで話し合うことが大切です。

8. ノラ猫を迷惑と思う人

ノラ猫の被害で困っている人にとっては、猫自体も猫の世話をしている人、関わる人も全て憎たらしい存在でしょう。でも少し冷静に考えて、困っている被害に目を向けてみてください。そしてその対策を講じてみることです。
猫が庭に入って悪さをしていることが問題ならば、「猫が庭に入らない方法」を参考にして、猫に対して優しい嫌がらせをやってみてください。 
ノラ猫は居心地の良いところにしか行きません。周辺のどこよりも素敵な場所だから寄ってきているのです。それが嫌ならば、猫にとって居心地を悪くすることです。何で被害者が対策をしなくてはいけないのかと言われますが、猫は責任の所在が明確ではない上、猫が居なくなる手立てがないのだから自分で対応するしかないのです。

9. 地域猫活動の成果

地域猫活動の成果はたくさんあります。まず不妊去勢手術を実施することによって猫の数が増えなくなるのは当然のこと、尿の臭いが薄くなります。エサやフンの管理を適切に行うことでトラブルがなくなり、町の美化に貢献できます。また猫の話題により住民間のコミュニケーションが増し、子ども達が生命を尊重し、弱者への思いやりを学ぶことにつながります。

10. 地域猫活動の課題

もちろん良いことばかりではなく課題もあります。ひとつには、すぐに問題が解決しないということがあります。考えの違った人達みんなで話し合いながら進める活動なので時間はかかります。ただし、じっくり話し合って住民が理解した上で確実に実施すれば、必ず上手くいきます。
次に、その地域に猫を置いていく人が現れることがあります。捨てる行為は犯罪ですから、必ず110番通報しましょう。

11. まとめ

捕獲して、不妊去勢手術して、元の場所に戻す、この一連の流れをTNRと言いますが、これで終わりにせずエサやフンの管理など適切な飼育まで行うことが大切です。
地域猫活動は、行政の調整で猫ボランティアの協力支援を得て、地域住民が行う活動なのです。
地域猫活動を実施することで地域力が向上し、良好なコミュニケーションがとれる地域となり、人間関係が円満になります。
私が思う一番大切なことは、この活動が地域のための活動だということです。

人と猫が共存できる地域は、人間にとっても住みやすい豊かな地域なのです。現在、飼い主のいない猫で困り、悩んでいるみなさんには、ぜひ地域猫活動をお勧めします。

他に方法がないなら、やってみる価値があるのではないでしょうか。