飼い主のいない猫は、飼い猫が捨てられたり、不妊去勢手術をしないで自由に屋外へ出した猫が繁殖して増えたものです。責任の所在を明らかにすることが難しいこの問題を解決する方法を考えてみましょう。

飼い主のいない猫対策(みんなで解決!猫トラブル)

Q1. 飼い主のいない猫は排除できる?

猫をみだりに殺傷したり、捕まえて他の場所へ捨てる行為は法律で禁止されています。
  動物の愛護および管理に関する法律44条(罰則)*2020年6月1日施行内容   ・愛護動物を殺したり、傷つけた者 → 5年以下の懲役または500万円以下の罰金
  ・愛護動物を遺棄した者 → 1年以下の懲役または100万円以下の罰金
 飼い主のいない猫も、動物の愛護および管理に関する法律において「愛護動物」と位置付けられているため、排除はできません。

Q2. エサをやらなければ、飼い主のいない猫はいなくなる?

猫には自分の縄張りがあるので、エサをもらえなくてもほとんど遠くへ行くことはありません。飢えてゴミを荒らしたり、家屋に浸入したりして生きていくためには何でもするので、新たな問題が発生します。

Q3. 飼い主のいない猫の被害に遭わないようにする方法はある?

猫が寄ってくるのは猫にとって居心地が良い場所だからです。それが嫌ならハッカ油や柑橘類の皮など猫が嫌う臭いや超音波器具などの忌避方法を根気よく続けて、猫にとって居心地の悪い場所であることを学習させることです。ただし、猫がその地域から居なくなるわけではありません。

Q4. 根本的な解決方法はないの?

一つの解決方法として「地域猫活動」の取り組みがあります。
「地域猫活動」とは
  飼い主のいない猫のトラブルを地域の環境問題と考え、住民の理解と協力の基にルールを作って適正に飼育管理し、飼主のいない猫によるトラブルのない住みやすい町にしていくことで地域住民と猫との共生をめざすものです。単なる動物愛護、猫擁護の活動ではありません。
中心となって活動するのは地域住民であり、行政や猫の活動ボランティアは住民がスムーズに活動できるように支援をすることが大切です。

※住民もエサを与えている人だけではなく、みんなで見守り協力する理解が必要です。

地域のルール

  1. 飼い主のいない猫をこれ以上増やさないために、必ず不妊去勢手術を実施すること
    ・手術後は耳カットなどの目印を付けることで、一目で手術実施の有無がわかるようにしましょう。〈例)オスが右耳カット、メスが左耳カット〉
  2. エサは決まった時間に了解を得た場所で適切な量だけ与え、食べ残しを片付けて絶対に置きエサはしないこと。
    猫を見ながらエサを与えると、健康状態や頭数の把握ができます
  3. 猫トイレの設置やフン、ゴミの清掃を行い、地域の環境美化に貢献する。
  4. 問題が発生しないように、地域で良く話し合いコミュニケーションをとる

地域猫活動の成功事例

1. S町内会(450世帯)

長年懸案であったが、飼い主のいない猫対策を放置 → 隣の町内会から苦情が入る → 広報で知った地域猫活動を検討 → 町内会で地域猫説明会を開催 → 実情把握や協力者を募集 → まず捕獲して不妊去勢手術からスタート → 4ヶ月ですべての猫34匹を手術する → この間、町内会だよりで毎月経過報告する → フン害対策としてエサやりさんの庭に猫トイレを設置、他にもトイレ設置協力者が現れる → フン害が減り、鳴き声もなく、猫が目立たなくなった

※ご近所同士だと苦情を言いにくいし、高齢者宅では対応できないなど、町内の問題として汲み上げることが大切である。
※エサを与えていた人たちの協力で、猫の頭数把握と全頭への不妊去勢手術が可能となった。

2. T町内会(500世帯)

フンによる苦情が保健所へ → 保健所の呼びかけで町内会役員と周辺住民で猫会議開催 → 保健所の提案で地域猫活動を知る → 猫の生息調査とエサやりさんとの話し合い → すぐに出来る事として町の美化運動を町内会住民に呼びかける(フンもゴミも清掃) → 猫の数を減らすために不妊去勢手術を実施(寄付やバザーで費用捻出) → 清掃活動やバザー後の親睦でコミュニケーションがとれる 

※みんな仲良くなり、いつの間にか猫問題もゆっくり解決していった。

地域猫活動とTNR

今以上に飼い主のいない猫を増やさないためには不妊去勢手術を実施することが一番効果的です。
猫を捕獲して、不妊去勢手術後元の場所に戻すことをTNRと言いますが、猫の数を減らすことに効果はありますが、ここで終わってはフン尿やエサによるトラブルは解決しません。地域住民が猫を見守り、管理を継続することで様々な被害も減り、時間はかかりますが猫の数もトラブルも減らすことができるのが地域猫活動なのです。

TNRは、地域猫活動の通過点です。

飼い主のいない猫は、誰かに押し付けていても解決しません。飼い主がいないのですから責任の所在が明確ではないのです。自分の住んでいる地域が猫によるトラブルのない住みやすい地域となるために、みんなで協力して解決を図りましょう。
まずは、地域の人たちで話し合うことから始めましょう。